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MENEHUNE BEACH STORE 店主のブログ
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プロフィール
HN:
menehune
年齢:
53
性別:
男性
誕生日:
1964/09/15
職業:
サーフショップやってます
趣味:
ランニング、作文、お絵かき、料理、丸太切り、丸太割り、波乗り
自己紹介:
2001年のオープン以来、ロングボードをベースに、フィッシュ、ボンザー、シングルフィン、ニーボード、パイポとさまざまな種類のサーフボードを作り、試してきました。
 気が付けば50歳を越えてしまいましたが、浮力を頼りにしながらもカラダもキープして、人生の荒波にチャージしていきたいと思っています。
 2006年に始めたこのブログ、サーフィンの他にランニングなどのフィットネスや食べ物、フツーの普段の生活のことなども綴っていきたいと思います。
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お知らせ:11月25日(月)~28日(木)はお休みをいただきます。私のもうひとつのルーツがある南の島へ行ってきます。お休み中、ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いします。

今日は2007年4月15日のメネフネニュースレターよりお楽しみください。

「LOCAL SHAPER NEVER DIE」

一本のサーフボードが目の前の台に乗っている。長さは6フィート2インチ。クラシックなイメージを漂わせる三角形のフィンが一本だけついたシングルフィン。スピードとルースさを感じさせるフラットなボトム。シンプルなボトムラインにテールエリアのVEEが僅かな変化を加えている。レールはシングルフィン全盛の時代そのままの厚くボリュームがあるダウンレール。テール近くには手触りも鋭くエッジが立てられている。デッキはレールに厚みを持たせるためにフラットに近いシェイプ。ダウンレールはサーフボードの両サイドから緩やかな曲線を作ってノーズで交わり、イーグルノーズというクラシカルな形状を作り出している。

ラミネートの樹脂に透明感がある明るいグリーンのカラーが混ぜられた古典的な着色方法。トップコートの樹脂がその上を包み込み、絶妙な力加減で磨き上げられた表面は深みのある光沢を放ち、廻りの景色を映し出している。ボトムからのラミネートのトリムラインには几帳面さと勢いを感じる極めて細いピンラインが一本、デッキのクリアをくっきりと引き立たせるアクセントになっている。

30年昔の時代に戻ってしまったかのようなデザインのボードだが、3日前にできたばかりのブランニューボードだ。もう40年近くもサーフボードを削り続けているサーフボードシェイパーが削ってくれた、1970年代そのままのデザインのシングルフィン。現在のほとんどのショートボードに付けられているトライフィンがまだ無かった時代、当時のサーファーはこんなシングルフィンのサーフボードで波に挑み、さまざまなテクニックに挑戦していた。

このサーフボードは、ダウンザラインとシングルフィン特有のラインでのサーフィンに加えて、テールのVEEを使うことによって今のトライフィンに負けないマニューバを描けるシングルフィンとして作られた。シェイパー曰く、いまのトライのショートボードでリップしている若いサーファーたちに試してもらいたいデザインだということだ。トライフィンと違ってフィンの限界を超えればスピンアウトしてしまうシングルフィン。一つしかないフィンとレールを使ってのサーフィンはきっとトライフィンのサーフィンの役に立つはずだし、新鮮な経験になるはずだと言う。

このシェイパーは、自らの豊富なサーフィンの経験を活かして、様々なタイプのサーフボードをシェイプする。南の島のシャローなリーフに砕けるチューブラースウェル、日本が世界に誇るパワフルなリバーマウス、湘南のリーフやビーチで割れるメローで優しい波。それぞれの波をイメージし、数多くあるブランクスの中から最適と思われるサイズ、ロッカーを選び出し、大きなウレタンフォームの固まりを素晴らしいサーフボードに変身させる。一本一本のシェイプを味わい、楽しむようにじっくりと時間をかける。一月のあいだにシェイプするサーフボードは10数本。商業的に成り立つとは考え難い数字。一本ずつそれぞれのシェイプを楽しんでいる様をみていると、おそらく彼の頭の中ではオーダーシートに書かれた顧客より一足先にそのボードでのサーフィンをイメージの中で楽しんでいるように見える。

サーフボードは柔らかい発泡ウレタンを樹脂を含ませたガラスクロスで薄くラミネートすることによって作られるとてもデリケートなこわれ物だ。こわれやすいという悩みを解消するために素材とラミネートの方法を変えた壊れにくいサーフボードの人気も高まってきた。このサーフボードはシェイプではなく、「型」から出てきた時点でサーフボードの形をしており、それを着色、仕上げすることによって完成される。大量生産をするのが容易な合理的な製法で作られるのだが、実際のところアジアのある一つのサーフボード工場では年間27万本ものサーフボードが作りだされているというから驚きだ。「型」(モールド)ボードだけでなく、従来の方法で作られるウレタンとガラスクロスのサーフボードもシェイプマシンを使うことによって、シェイプの手間が減りボードの生産数を増やすことが可能になった。

サーフボードを大量生産し、スポンサードするライダーでブランドイメージを作り出し、多くの宣伝費用を投じてサーフボードを販売する。サーフウェアという位置づけで、ブランディングと販売戦略を展開するアパレルメーカーやウェットスーツメーカーを含めてサーフィンの一大産業を作り出している。サーファーたちはそれらの中から自分の好みに合ったサーフボードとウェットスーツを手に入れ、サーフウェアを着こんで海へと向かう。それが現在の一般的なサーファーの姿だ。


頑固という訳でも、変わり者という訳でもない。一枚のA4サイズのオーダーシートから広がるイメージを楽しんでいるかのように、ブランクスにマーキングをし、テンプレットを当ててボードのアウトラインを引く。大切なのはビジネスのペースよりも自分のペース。それが彼にとってシェイプという「仕事」を楽しむコツのようだ。派手な宣伝はしない(できない)が、評判を聞いた地元のサーファーたちがシェイプを依頼にやってくる。出来上がってくるサーフボードは有名なサーフボードメーカーにも負けない出来映えだ。なによりも地元の波を知り尽くしているのも強味になっている。

有名なインターナショナルブランドやモールドボードがサーフボードマーケットのシェアのほとんどを占めるようになったとしても、地元のシェイパーはそんなことには関係なく地元のサーファーのためにサーフボードを削り続ける。量販店の店先に並ぶ色とりどりのボードから自分が気に入る一本が見つかったときの嬉しさも格別だし、ストックとして量産されたサーフボードだって調子は変わらず良いものだ。

インターナショナルなブランドをチェーン店の飲食店に例えるなら、地元のシェイパーたちはご当地自慢の味の料理を出す昔ながらの料理屋のようなものだ。どの地域の店で食事をしても同じ味を提供してくれるのがチェーン店の良いところなら、地元でないと味わえない特別な味もある。地元で地元のサーファーたちのためにボードを削り続けているシェイパーは皆さんの意外と近くにいるかもしれない。地元で評判の料理店なら、地元にしかない食材を使って、その旨みを最大限に引き出す調理法で自慢の一皿を提供してくれるだろう。地元のシェイパーもそれと同じだ。地元の波に乗って集められたデータと経験をもとに、インターナショナルブランドのサーフボードには無い、地元ならではの特別な一本を作り出してくれる。

パワフルなインターナショナルブランドに負けない魅力を持つアンダーグラウンドなローカルシェイパーのサーフボード。そこには大量生産品にありがちな均一感は存在しない。生産効率よりも乗り手と作り手のコミュニケーションから生まれる相互の理解が重視される。そして同じシェイパーのボードを使うものどうしの連帯感。人と情報の交流がある種感情的なエッセンスとなったローカルシェイパーが作り出すサーフボードには、乗り手と作り手の顔が見え隠れしているように思えてくる。

地球上のどこかでは今この瞬間にも、白い粉にまみれながら海岸近くの秘密基地のようなシェイプルームの中で密かな楽しみに没頭しているローカルシェイパーがいるに違いない。



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