MENEHUNE BEACH STORE 店主のブログ
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プロフィール
HN:
menehune
年齢:
59
性別:
男性
誕生日:
1964/09/15
職業:
サーフショップやってます
趣味:
ランニング、作文、お絵かき、料理、丸太切り、丸太割り、波乗り
自己紹介:
2001年のオープン以来、ロングボードをベースに、フィッシュ、ボンザー、シングルフィン、ニーボード、パイポとさまざまな種類のサーフボードを作り、試してきました。
 気が付けば還暦が近づいてきていますが、浮力を頼りにしながら、カラダもキープして、人生の荒波にチャージしていきたいと思っています。
 2006年に始めたこのブログ、サーフィンの他にランニングなどのフィットネスや食べ物、フツーの普段の生活のことなども綴っていきたいと思います。
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久しぶりに本のお話しでもと思い、太宰治です。

太宰治というと、「人間失格」や「斜陽」、「走れメロス」なんかを思い浮かべると思います。何度か読んでいます(他の作品もちゃんと読んでます)が、正直に申しますと私はどれも苦手です。青年期、流行り風邪みたいにはまっちゃう人がいるらしい太宰治作品ですが、若いときにも、そして歳を取って改めて読んでも、やっぱり苦手。

でも、この作品を読んで多いに見方が変りました。「お伽草紙」という作品です。


この本には、井原西鶴や聊斎志異を基にした短編が収められていますが、お伽草紙はいわゆる日本昔話です。瘤取り(こぶとり)、浦島さん、カチカチ山、舌切り雀の四編がお伽草紙という題名で収められています。

昔話でよくあるパターンは、正直じいさん(または、ばあさん)と意地悪か欲深じいさん(ばあさん)が登場して、正直なほうが得をして、もう一方は損をするか散々な目に合ってしまうというパターンです。

この作品でも基本的な話の流れは元の話と同じですが、違う点は社会的、家庭的により現実的に書かれている点です。子供がこれを読んでも話の面白さは分からないと思います。これを面白いと思うのは、ある程度歳を重ねて、日常生活での心情の微妙な動きを共感できる大人だと思います。

たとえば「瘤取り」。コブとりじいさんのお話し(話は皆さんご存知と思いますが、若干ネタバレあるかもです)

気の良いじいさんは、お酒が大好きです。楽しく暮らしているように見えますが孤独です。真面目で働き者の息子と昔美人だったらしいおばあさんと暮らしていますが、お酒を飲むのはひとり。ひとり気持ち良くなっても、息子とおばあさんは真面目過ぎてあまり話し相手になってくれません。

おじいさんの楽しみは、天気が良い日に腰に酒が入った瓢箪をぶらさげてたきぎを集めに行くこと。たきぎを集めてしまうと、眺めが良い場所に座り瓢箪の酒をちびりちびりと、頬のコブを触りながら独り飲ることです。

頬のコブにさえ、息子とおばあさんはあまり関心を払ってくれないのです。

そしてあるとき、山で雨宿りしているうちに酔っぱらって寝てしまいます。夜中に目を覚ましたおじいさんは、楽しそうな雰囲気につい引き込まれて鬼の宴会の輪の中で踊り出してしまいます。酔っ払いは酔っ払いの雰囲気が大好きなのです。

鬼に踊りがウケたおじいさんは、明日も来るようにと頬のコブを質に取られてしまいます。

酒飲みの悲しさ、酔いが醒めて我に返ると一晩空けてしまった家へ慌てて帰りますが、息子もおばあさんも仕事に忙しく、昨夜の出来事を話す雰囲気ではありません。頬のコブが無くなったことにさえ、たいした問題にはなりませんでした。

お隣にもコブのあるじいさんが住んでいます。このじいさんは堂々とした体格で顔立ちも立派、思慮分別もあって、財産もあり近所の人たちからも一目置かれている存在ですが、数少ない悩みのひとつは頬のコブ。

このじいさんのおかみさんと娘は陽気で仲が良く、いつも笑っているような母娘です。おじいさんのコブをからかっては喜んでいるような外から見れば明るい家庭のお隣さんなのです。

そんなイケメンのじいさんは、隣の酒飲みじいさんのコブが無くなった話を聞いて、よし自分も取ってもらおうと勇み立ちます。

そうして山へと出かけて行きますが、結果は皆さんが知っているお話しの通り、コブが二つになって戻ってきます。

結局この二人、どちらも悪いところは無い二人のおじいさんの何が違ったのか?何が良くて何が悪かったのか?ということになって結末を迎えるのですが、その疑問に対して、人間生活では良く起こることに過ぎないという意味の答えが用意されています。

浦島さんでは、口が悪くてシニカルなべらんめえ調の亀の背中に乗って竜宮城へ行きます。最後には玉手箱を開けてしまいますが、歳を取ることは救いでもあるというお話になっていきます。

カチカチ山は、純粋な乙女(兎)におっさん(狸)が惚れたという設定で、純粋さゆえに残酷に物語が進んでいきます。一方的な恋愛は、理屈抜きで惚れてしまったゆえの勘違いと間抜けさ、そしてもう一方は無関心と嫌悪という残酷な関係で進むストーリーに、兎のおばあさんのための復讐が加わる凄まじいお話しです。

舌切り雀は、おばあさんに舌を抜かれた雀を、おじいさんがハードボイルド調にクールにそしてワイルドに探し回ります。雀のお宿の場面では、ハンフリー・ボガードみたいに「優しい言葉だけは、ごめんだ。」とじいさんは苦笑して立ち上がるのです。


誰でも知っている昔話をベースにしていますが、性格や宿命、愛憎など、人間のどうにもしがたい本質的な部分を取り上げて書かれたお話しは、読む人それぞれに違ったかたちで響いてくる「おとぎばなし」です。

簡単に読めるのですが、それぞれの登場人物の心情を考えながら読むのが面白くて何回も読んじゃいました。

太宰治「お伽草紙」ぜひ読んでみてください。


さて、明日は波良さそうと思っていたら、予報が変ってオンショアになりました。オンショアでやるか、薪割りするか、どうしようか。





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